弁護士 豊崎寿昌

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法律家養成のコスト

2003年06月28日

法律家養成のコスト

ある法学部大学生が法律家を志した場合、実際弁護士として登録できるまでにいくらくらいのコストがかかるのか。

従来の司法試験制度の下では、
① 司法試験に合格するまでの生活費
② 司法試験に合格するまでの予備校代
だけでした。司法試験に合格してしまえば、司法修習生の間は新卒キャリア並みの給料が支給されますので、少なくとも独り身では、贅沢を言わなければ暮らしていけました。

例えば私の場合、司法試験受験を本気で決断した大学4年の時点で、アルバイトで貯めた貯金が約150万円。受験勉強に入り出してからのバイト(家庭教師)が月平均4万円くらい。

自宅から大学と予備校に通い、学費と予備校代を支払って、3年目に合格したときは、ほぼ貯金が底をついていましたから、合格までには延べ250万円くらい使ったと言うことでしょうか。

ただ、受験中もスキーに行ったりと、わりに悠々自適な生活を送っていましたので、正味は200万円弱と言うところでしょう。

合格後、またバイトして、研修所入所時点で貯金が50万円くらい。起案のためパソコンを買い(当時は高い!)、盛岡に赴任して、現地で車が壊れて買い換え(;;)、修習を終えたときには貯金はゼロ、親に借金が120万円でした。

ざっとみて、車はよけいな話としても、弁護士登録までに250万円の自己資金が必要という感じとなります。ま、これくらいなら贅沢をしなければ、弁護士登録後2年もあれば返せます。

しかし、この秋から入試が始まるロースクールと、その後に続く新司法試験、修習ではこうはいきません。

まずロースクール。私大だと年間200万円以上の学費がかかると言われています。2年間で400万円。
 
そして新司法試験後の修習は、給与が「貸与制」になる公算が大だとか。だとすると、給与(貸与されるのなら「給与」じゃないですが)が現行どおりとして、1年で350万円の借金ができる勘定です。

つまり、ロースクール後の法律家は、スタート地点で現在より750万円も多くの借財を背負っているわけです。

何ともつらい現実、というか、私が現在学生だったら、法律家を目指すかどうか考えてしまう額の借金と言わざるを得ません。

それでも医者よりはマシだろう、とか、どうせ弁護士になった後は儲けているんだから、と言う声が聞こえてきそうですが、お医者さんの世界も、医学部にかかる費用の高額さのために、志望段階で医者になる道をあきらめる人は相当います。

これまでの弁護士の世界は、司法試験受験生時代は非常に苦労する方もいますが、合格後はガツガツしなくても弁護士登録にこぎ着けられ、スタート時点から自分のやりたい仕事を目指すことができました。今後はどうなんでしょうか?

日時 :
2003年06月28日 22:52
メニュー :
業務日誌 > 司法改革

弁護士 豊崎 寿昌

(とよさき としあき)

弁護士 豊崎寿昌

  • 東京弁護士会所属
  • 由岐・豊崎・榎本法律事務所(東京・八丁堀1丁目)パートナー

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