弁護士 豊崎寿昌

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明徳義塾の罪と罰

2005年08月05日

明徳義塾の罪と罰

甲子園出場、せっかく決まったのに、部員のいじめ&喫煙で、出場辞退ですか………

前々から思っていましたが、何か、しっくり来ないものがあります。なぜ、一部部員が不祥事を起こすと、その部全体が出場辞退を強いられるのでしょうか?なぜ、その部員や監督のみに対するペナルティではだめなのでしょうか?

ペナルティというものは、犯した罪に対し、相当で合理的な範囲で課されるからこそ、説得力があるものです。高野連は「高校野球は教育の一環だから」とか何とか理屈をつけているようですが、教育だからどんな連帯責任を負わしてもいいというのは、極めて前時代的な発想でしょう。ルールとフェアプレイの大事さを説くスポーツであれば、ルール違反に対するペナルティも合理的でなければ説得力を持たないで
しょう。

実際、自分は不祥事に関わったわけでもない明徳義塾の部員たちはどう感じるのでしょうか。高校野球というのは、高校3年間しかチャンスがなく、その貴重なチャンスをもぎ取った彼らです。自分が直接犯したわけでもない罪のために、いきなり晴れ舞台への権利を奪われて、納得がいくでしょうか。

これに対しては、「チームなのだから、仲間の不祥事は連帯責任」という反論も聞こえてきそうです。一見、わかりやすそうな理屈です。でも、これを法的に言えば、「部員はチーム内の他の全ての部員に対し、互いに監視・監督義務を負う」と言っているのと同じです。そんなスパイ集団みたいな部活、想像したくもありません。

例えば、相互に監視義務があるとされる株式会社の取締役は、株主総会で選ばれ、会社に対し忠実義務があるからこそ、監視義務が正当化されるのです。部活をやっている部員は、そのスポーツがやりたいからその部に入ってくるのであって、(レギュラーになれるかどうかはともかく)部員になるのにセレクションはありません。また、部活はあくまで本人のためにやるのが第一義であって、本人のためより学校のためを優先できるはずもありません。このような部員が相互に監視義務があるなどと考えることは、余りにも無理です。

事実を内々に処理しようとした監督らは、時代の要請を読み間違えた点で責任を負うことは否めません。しかし、他の部員たちは可哀想だなあ、というのが私の感想です。

日時 :
2005年08月05日 23:22
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弁護士 豊崎 寿昌

(とよさき としあき)

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  • 東京弁護士会所属
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