弁護士 豊崎寿昌

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家裁というお役所

2006年02月16日

家裁というお役所

弁護士を始めてこの方、どーうも家庭裁判所というお役所のやり方には馴染めないところがあります。

まあ、地裁と喧嘩することもよくある話ですが、地裁の方は、まだ「当事者にとって合理的な処理」というのを認識してくれている場合が多いです。家裁は、この辺の感覚がちょっとずれているとしか思えない点がまま見受けられるのですよねえ。

現在、離婚と財産分与・慰謝料をめぐって調停になっている事件がありますが、紆余曲折を経て、相手方代理人との間で、2月末までに解決金の支払いを受ける代わり、支払を確認次第、当方が離婚届に判を押して送付するという内容で合意が成立する見込みになりました。そこで昨日、双方ともこの内容で和解をしたいと裁判所に申し出たわけです。

ところが裁判所は、「家事調停を申し立てた以上、調停離婚にしてくれないと困る」との一点張りです。

調停離婚は、確かに調停調書があれば、相手方の署名捺印のある離婚届がなくとも離婚手続きが行えます。しかし、本件のように、解決金の支払いを離婚の前提条件とする解決方法にはなじみません。調停条項にそんな条項を書いても、役所の戸籍課の担当官は、条件どおり支払があったかなかったかについて判断する権限も能力もないからです。

ですので、調停離婚とする場合は、一方で解決金の支払いを約束、他方で調停離婚の成立という条項をいれることはできても、両者をリンクさせることは不可能になります。これでは、双方の代理人が苦心して編み出した「支払を離婚の条件とする」点が反映されず、当方にとっては、支払の確実性が担保されるかどうか不安ということになってしまいます。当然、応じられる状況ではありません。

ということを、裁判所に伝えたところ、裁判所も困って、今度は相手方の方に、「もう一度調停期日を入れるので、次回期日直前に事実上支払を済ませてくれ。その上で次回調停離婚を成立させたい」と説得を始めました。

今度はリスクを負うのは相手方の方です。無条件で支払を先にしてしまって、離婚が成立するかどうかは調停当日まで100%の保証はないのですから。相手方代理人も難色を示していたようですが、結局押し切られてしまいました。

でもですね、これで次回期日は1か月後です。当事者の要望どおり、和解による決着をさせてもらえれば、2月中に決着がついたのに、裁判所の主義主張のために、解決が遅れるようなものです。別に和解による処理は違法でも何でもないのに、事案の性質を顧みないで調停離婚にこだわるのは、よくわかりませんが単なる裁判所のメンツの問題としかいえません。

頭に来たので、本日、相手方代理人に裁判外での和解による解決を打診して、2月中に解決を図ることにしちゃいました。無事、解決が図れれば、調停は双方取り下げることになります。裁判所は、結果として紛争解決の場に利用してもらえなかった己のやり方について、少しは反省してもらえるでしょうか(無理でしょうね)。

日時 :
2006年02月16日 23:00
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コメント

それって調停調書に執行文付与してできないのですか?お暇あれば教えてください

投稿者 ファン : 2006年03月09日 19:50

調停調書で強制執行は法的には可能です。問題は差押え可能財産が存在するかです。差押え可能財産がなければ、債務名義だけ持っていても絵に描いた餅に終わってしまいますので。

投稿者 豊崎寿昌 : 2006年03月10日 18:04

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(とよさき としあき)

弁護士 豊崎寿昌

  • 東京弁護士会所属
  • 由岐・豊崎・榎本法律事務所(東京・八丁堀1丁目)パートナー

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